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法律に関しては素人であった(現在もそうですが)管理人は、弁護士からも書籍等からも学びました。公益通報に役立った書籍を中心に紹介します
(ご購入の場合は本サイト経由ですと支援になります)。
尚、管理人のコメント等は主観的なもので、著者の意見を代弁したものではありません。



    Title Review
    ●名誉毀損裁判 - 言論はどう裁かれる
(浜辺陽一郎、平凡社新書)


本サイトの内容は、当然に名誉毀損の怖れがあり、しかも、相手は弁護士費用に数千万円でも数億円でも投入でき、 また、元々の不法行為に加え、その故意による隠蔽、放置期間中の背任・闇給与の被害の拡大等の不法行為が加重されているから、狂人のようなもので よくよく注意しなければならない相手です。

管理人が最終的に公益通報に踏み切る中で、もっとも役立った本の一つです。

法律的知識もそうですが、筆致は「裸の王様に対して「王様は裸だ」と言ったら名誉毀損」という寓話から始まり、名誉毀損裁判の構図を明らかにし、 それに絡む諸問題を明らかにするなど巧みです。
管理人は、プロジェクト(本サイトによる告発)が、名誉毀損に該当するが(前述のように「王様は裸だ」というのも名誉毀損になってしまう可能性が高いのですから、「虚名」も保護されるというのは、中々一般人の常識ではない) 「違法性阻却の要件に該当すべき」と判断し、公開を進めました(「べき」と書いたのは管理人の判断で、浜辺先生が薦めたり、保証しているわけではありません)。
文庫本ながら、内容は重く、管理人のプロジェクトにも大きな影響を与えました。 尚、表現の自由や、報道機関の問題にも踏み込んでいるが、現状管理人はコメントする立場には無く、マスコミの方からの批評があれば伺いたいものです
 
    ●名誉毀損 - 表現の自由をめぐる攻防
(山田隆司、岩波書店、230ページ)


本書も良本です。「お前の母ちゃんデベソ」と言ったら名誉毀損に該当と、何やら、裸の王様から入った前掲書に、入り方が似ているのはご愛嬌ですが、新聞社の立場からですが、言論の自由の擁護が述べられ、それは管理人の公益通報が妨げられるべきでは無いという論理と重なり、参考になる事多数でした。

実際の事件を例に取って、名誉毀損を巡る枠組みを明らかにしています。
例えば、「動物病院に対するネット上の中傷」という案件では、管理人は「対抗言論」という概念を学び、 それは少し形を変えて、住信の公益告発潰しに対して「住信は複数の弁護士事務所を抱え、充分に反論する能力があるのに、反証もあげられないから、自ら、弁護する機会を放棄したと言え、名誉毀損で保護されるに値しない」という、反論の一つに帰結しました。
実際、住信は弁護士多数を抱え資金も豊富な「強者」であり、それが弁明一つできないのだから、告発内容は真実だろうというのが、一般的・常識的な判断でしょう。

また「(真偽に関わらず)私事を公表すると、プライバシー侵害が成り立つ可能性がある」。但し、現在は「比較衡量」の原則により、公表された事態が公益に資する度合いが高い場合は容認されるという判例が確立している事も学び、それは公益告発潰しに抵抗する最大の論拠となりました。
住信が弁護士を連ねて公益通報潰しに掛かった時、落ち着いて対処できたのは、この本のおかげも大きかったものです。

現職の総理大臣が、小出版社を名誉毀損で訴えた例では、総理側が、過去の検挙歴などを公安に紹介するのを拒否したため、「訴えておいて、自らの潔白を証明する手段を拒否するのは訴訟上の信義則に反する」などがの述べられています。
管理人は自らの立場に当てはめ、住信は訴えると、役員の不法行為の真偽を立証しなければならない立場に追い込まれる事が分かっているから訴えられないのだとニヤリとしたりしました。

総じて、コーポレートガバナンスについて知りたい方、公益告発を考えられている方には必読の書と言えます。

    ●図解 コーポレートガバナンス
(内海 英博、日本実業出版社 (2004/6/25) )


コーポレート・ガバナンスの内部監査・内部通報制度、コンプライアンス等の関係から、エンロン・大和銀行等、代表的な事例を引きながら解説しているため 2004年刊行で、公益通報者保護法の成立前であり、内容的には多少古くなっていますが、コーポレート・ガバナンスの全体像を理解するのに良本です。
住信が通報後も隠蔽に走るのを「組織ぐるみ」不法行為であるとか、通報が機能していないのは明らかに経営陣の責任であり、知らなかったでは済まされないなどと 管理人が悠々と断じているのも(もともと当たり前なんだけど)この本のおかげです。

また、商法改正による監査役権限強化・委員会等設置等のガバナンスの形態の変化についてもまとまっています、 この部分は入門書である「取締役になったら初めに読む本」(後述)を少し詳しくした感じです。 (考えてみると、住信がコーポレート・ガバナンス強化どころか、実質的に利用したのは経営者にストックオプションを発行しただけというのが笑えますが)。
 
      ●役員の法律知識がよくわかる! 取締役になったら「初めに」読む本 [単行本]
(福崎 剛志、224ページ、 出版社: すばる舎 (2010/8/11) )


標題から分るように、取締役の責務についての入門書で、例えば工場長であまり法律には詳しくなかった社員が取締役に抜擢され、先ず最初に読む本と言った感じです。
字が大きくて数時間で読めますが(その割に価格が高いと思いますが)、特に善管注意義務について注意喚起してある等、柱がしっかりしており、また、取締役会の運営法等、 コーポレート・ガバナンスを論じた本には無い記述は参考になります (取締役の解任は実は抽象的理由で可という下りを読んで「三越の社長はともかく、そんなんで社長解任されるのか」と思っていたオリンパスの事件が手続きには有効であった事を納得しました)
    ●図解 株主代表訴訟
(浜辺 陽一郎、東洋経済新報社、248ページ)

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本公益通報の経緯を少し振り返ってみますと、管理人は土屋や恒吉等の犯罪を証拠を付して「経営陣直通」の内部通報制度に通報したからには、 迅速に処分が為され、世の中が少しは良くなるかなと思っておりました。

ところが、読者がご存知の通り、住信は隠蔽に走ったため「もしかしたら経営陣そのものが腐ってるのか?」と思い始めたのでした。ですから、管理人を無理やり経営陣の責任追求の方向に曲げさせた「コンプライアンス統轄部長」の責任は極めて大です。
ま、それはとにかく、管理人はそのため「株主代表訴訟」についても学ぶはめに陥りました。数冊を比較し、 発行が古いし、もともと「図解なんとか」という本はあまり好きでは無いにも関わらず(文が圧迫され、情報量が減ってしまうので)、書きぶりに惹かれ読み始めました。

本書は、内容的には、
株主代表訴訟とは・
原告/被告/会社からみた株主代表訴訟・
株主代表訴訟への対策
等の章からなり、その点では類書と何等変わりません。
ただ、書き方や事例の紹介の仕方が秀逸で、現在公益通報の渦中にいる管理人に参考になり、共感を覚えたのでした。
制度に関する知識は読んで頂くとして、印象に残った箇所を紹介しますと;
第2章では、株主代表訴訟で問題とされる行為が列挙され、住信の経営陣の問題は本質的には監督義務違反である事が分かりますが()p93)、 例えば高島屋事件では、総会屋に直接関与していたのは専務のみでも、監督義務上社長等はそれを知っている「べき」であり、罪が免れなかった例があります。 すると「経営陣直通」の内部告発をもみ消しているのだから、常陰社長が自らそれをしようがしまいが責任があります。
第6章の株主代表訴訟への対策にも関連記事があり、中でも笑ってしまったのは「不祥事を起こす会社には起こるべくして起こった体質のようなものがある」「共通する特徴はトップの不見識」等の下りです(p216)。
管理人は、職員個人に加え、住信・経営陣全体の責任を追求する方向へ舵を切っていった(本サイトの公開) のでしたが、それには、自らの見聞に加え、本書等の関連知識を吸収し本質に迫ろうとした試み結果でした。

また、住商事件では不正銅取引の事情説明を求める株主が、総会で社員株主の「異議なし」唱和に怒って、代表訴訟を決意した下りも大きく参考になりました (未だ、株主総会には出席していませんが、出席するとおそらく同じ事が・・・・)

大和事件の例では(p90)、「2ヶ月」不祥事を隠していた大和銀行がFRBに「組織ぐるみ隠蔽」と認定され、国外追放の上、3億千万ドルの罰金を課された例を読むと、「日本の金融当局って何なの?」と思ってしまうのは仕方ないでしょう(当然に告発された事項は検査事項にあるので、当局がチェックしていなければならない)。

刊行が2001年なので、当然に監査役の提訴要求熟慮期間が30日から60日に伸びたような後発事象は書いてありません。 また、例えば、大和銀行の代表訴訟に対する即時抗告等、実際の法廷戦術に関わるような事象も、入門書ですから書いてありません。
ただ、贔屓の引き倒しでは無いのですが、まだ法案が寝られている最中に書かれているので、例えば、経済界側の言い分(「経営心理の萎縮をまねく」p195)等 議論の過程も記されております。
この点、住信の役員が「萎縮」など全くしておらず、公益通報されれば弁護士の集団を使い力づくで叩き潰そうとするなどの行為が現実にあるので 振り返ってみれば、経済界の言い分が、如何に、実情とかけ離れていたものだったかが分かります。

少し長くなってしまったので、締めくくりに、引用すると
「日本では、コンプライアンス経営の重要性が理解されず根付いてもいなかった。株主代表訴訟の存在がかろうじて、違法行為を抑止する機能を果たしてきた」(p46)
という一文は株主代表訴訟に対する総括で、管理人は法律の知識と共に、このような perspectiveを与えてくれる意味で本書を非常な良書と思います。

       
    ●新株主代表訴訟対応マニュアル
(商事法務、経営法友会ビジネス選書10、219ページ)

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株主代表訴訟に関するお勧めの一書(2005年刊なのがやや不満、ただ前掲書よりは4年も新しい)。
不法な経営陣と対峙するのは、当然に株主代表訴訟は有力な手段であり、本書は、書名から経営者側の視点と思えたので、参考になるかもと読んでみました。
実際には、特段に資本家側に立ったものではなく、また「手続き」「Q&A」等まで章として独立しているのは類書にない特徴で(QAは「提訴されたどうしますか」などと会社側からの質問になっていますが、原告側としても大いに参考になります)、株主代表訴訟に関する良い入門書・実務指南書と思えます(これだけで訴訟ができると思うなかれ)。
ただ、図も絵も無く(フローチャートや表はある)文章も気になる程ではありませんが、やや硬いので(バーミヤンで夕食を取りながら付けていた日記には“法律の趣旨を「没却」って何だよ”などと書いてあります。まあ、管理人が無知なだけなのでしょうが)。
しかし、160件以上の株主代表訴訟等の例、D&O保険の約款等、も掲載されていて資料性も高く、他の入門本の後に読まれると、効果大でしょう。
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尚、最終章は「日常の対策」です。「日常の」とあるだけに、「取締役等は、会社の利益を優先して業務を執行、違法行為があった場合はこれを差し止める・・」等と、考えてみれば当たり前の事が書いてあります。これが、住信の実情と「悉く」違うので、住信は本書を500冊買って、役員と部課長に配ると良いと思えるんですが・・